2017年8月25日(金)から26日(土)、信州大学長野(工学)キャンパスで開催された、第9生活保護問題議員研修会に参加。
第9回をむかえるが、私のとっては初めての参加だ。
基調報告はケースワーカー歴20年という花園大学の吉永純先生。
「生活保護の動向と生存権の保障」と題して行われた。
1、「一億総貧困時代」と社会保障の後退
・貧困率(特徴)
「一億総貧困時代」(雨宮処凛氏)と呼ばれているが、多くの貧困に関する本や論説が出されている。貧困率の推移は、6.4人に1人、16.1%から15.6%、6.4人に1人になったと言われるが、こどもの6人に1人から7人に1人となって貧困の解決と言えるかだ。
ひとり親家庭では、実に2人に1人が貧困。生活保護以下の月収10万2千円以下つまり年収122万円以下が貧困線だが、柳井氏(ユニクロ)は年収1兆6498億円、孫正義氏(ソフトバンク)は年収1兆3221億円(2013年の厚労省統計)だ。
貧困線が下降する中での貧困率であること、日本人の収入はジワジワと下がっているのが現実。20年前と比べて年収で50万円下がっている。
・高齢者、障がい者の貧困
東京都立大学阿部綾先生の調査によると、若い男性と高齢の女性が貧困である。年金収入のみの高齢者世帯は54%もということは、年金が下がると直接ダメージを受ける世帯が半分以上ということ。
低年金が「老後破産」へとすすめる。病気・介護・熟年離婚・こどもの貧困(共倒れ)が老後破産のきっかけとなっている。
貯蓄100万円未満の世帯が高齢者世帯の25%ということは、いつ生活保護になってもおかしくないのだ。年金の充実もなく、高齢者は働くという予想を国は、総活躍と言い放っている。80代の親を
50代が看ているのだ。
障害者はの貧困は、一般の人の倍である。貧困線を下回る障害者は81.6%。障害がある方の親との同居の割合は、国民一般の親との同居の3倍であるが、いずれは一人暮らしになるということ。
最近の生活保護のデータからみると、保護受給機関が長い、貧困のこども、貧困女性、貧困の高齢化が顕著。男性の単身の保護受給は長引かないが、就労収入増であるものの賃金は低い。であるので、ひとり親の低賃金と最賃の低さなど雇用市場の問題が鮮明。
雇用は増えているが、中身は4割が非正規。生保から抜けても、しばらくして戻ってくる。
重税地獄日本。
勤労世帯の社会保障負担は10年前から+9,000円。東京都国保料+7,252円。介護保険での差し押さえ、13,371人で過去最高。
シングルマザー世帯の国保料。
所得110万円(収入184万円)40代、未成年のこども2人の場合、大阪市220,100円、横浜市214,491円。所得が200万円(収入310万円)の場合、大阪市371,204円、横浜市356,905円。
これに年金と家賃(6万円)が入ると、京都市の試算では、月収15.3万円で一日当り1,983円、月収25.8万円なら一日当り4,964円。食費分に大きな影響を与える金額だ。まさに国保が人を殺すときだ。これは国保の都道府県単位化問題であると、寺内順子氏は指摘している。
2、生活保護の現状と行方
そんな中で、生活保護の運用では締め付けの強化がなされようとしている。
これまでの2013年引き下げの影響も甚大である。
1、高齢者世帯でマイナス24,000円。2、母子世帯でマイナス120,000円で相当な打撃である。
2、食品の値上がり。アベノミクスによる円安誘導で輸入食料等の価格上昇。
3、住宅扶助減額の影響。転居約2万世帯、転居指導約5万など、27万所帯、4分の1弱世帯が影響を受けた。
運用面では締め付けの強化が。
就労支援の強化。不正受給抑止が福祉事務所の仕事か?
これによって、生活実態との矛盾が激化。
・有子加算の減額▷廃止はこどもの貧困対策と矛盾。
・保護世帯高校生の大学進学支援策の具体化
・年金縮減▷生活保護高齢者の増大⇄「我がこと・丸ごと」路線への誘導
・貧困の拡大に行政はどう対応するのか。
3、地方議員の役割と期待
1、生活保護の最大限活用。こどもの貧困対策でこどもの貧困調査と計画の策定を。
2、子どもの貧困調査と計画の策定を。
3、生活困窮者支援の本格的実施「「滞納取り立てより支援」
市民一般への課題解決策と平行して貧困問題を解決する視点(保育所、学童、国保等)
市民と生活困窮者・生活保護利用者を分断しない取り組みが期待される。
生活保護は「経済的骨折ににギブスを宛てている制度」気軽に、有効活用しましょうと呼びかけられて締めくくられた。
「貧困」は人としての生きていく権利そのものが奪われている状態であることをしっかりととらえること。
低所得層への様々な人として生きていく権利を回復していく制度、衣食住、医療を受ける権利、学ぶ権利等の回復は、この私たちが生きている社会全体の底上げに繋がる。
底上げそのものである。